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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第18章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 祖父の願い

 彼の主人を思う心が判るだけに、キョンシルは何も言えなかった。
「繰り返しますが、旦那さまはうわ言のようにお嬢さまにお逢いしたいとおっしゃるだけで、お屋敷にお連れするようにと命は受けてはおりません。お嬢さま、いかがなさいますか?」
「行きます」
 躊躇いもなくキョンシルは応えた。この世でただ一人の肉親である祖父が自分を呼んでいる。今、行かなくて、いつ行くというのか。
 馬執事のひょろ長い顔が歓びに輝いた。
「それはよろしうございました。気が早いかとは存じましたが、輿を持っておりますゆえ、どうかお乗り下さいまし」

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