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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第18章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 祖父の願い

 キョンシルがイルチェに逢うのを承諾することを予め見越していたのだろう。流石に気難しいイルチェが懐刀として重用するだけはあって、外見に似ず切れ者の男である。
「トスおじさん、行ってきます」
 それ以上に言葉は要らなかった。トスはキョンシルの瞳を見て深く頷いた。
「ああ、行って、しっかり孝行してくるんだ」
 トスの力強い言葉が、声が背を押してくれる。キョンシルはともすれば沈み込みそうになる気持ちを必死で奮い立たせながら、夜着から普段着に着替えた。
 小さな家ばかりが並ぶ町外れには似合わない立派な女輿が家の前に待っていた。屈強な若い家僕が二人、輿の側で畏まっている。

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