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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第19章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 再会

「父が亡くなったのは私が赤ン坊の頃だから、父の記憶は全くないの。今日は色々とお話を聞かせて頂いて、良かったです」
 帰りも来たときと同じように輿で馬執事が付き添い家まで送り届けてくれた。
「それでは、お嬢さま。私はこれにて失礼致します」
 馬執事はやはり馬に似た顔を引き締め、丁寧に頭を下げて帰っていった。
 蒼く染まった眉月が屋敷に戻ってゆく馬執事や空の輿を担いだ下男たちを照らしている。一行が路地の角を回って見えなくなったところで、キョンシルも背を向けた。

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