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君の笑顔

第31章 いるはずのない人 ~片野 和泉~

しばらく沈黙が流れたあと、
陽介が大きく溜め息をついた。



「嫌なんだよ。本当に、誰かに想われてるお前が。イライラするんだよ。何でか自分でも分かんないけど…」


陽介は何を勘違いしているんだろう。


「私別に誰かに想われてなんかないと思うけど。」


陽介の身体に回していた腕をほどきながら言う。


するとまた陽介は大きく溜め息をつく。



「そうだな、お前はそんなつもりないんだもんな。」

陽介が振り向いて私の頭に手をのせた。


「さ、帰るぞ!お前んちどこだ。」
陽介は手をどけながら歩き出した。

「……そこ、右に曲がって左側。」

私はボソッといった。


「まじ…?俺んちとめっちゃ近いかも。」


「うそ……」

私たちは顔を見合わせて笑った。



陽介の笑った顔好きだな…


陽介の笑顔を私はじっとみながら、思った。

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