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沢村の家を出て角を曲がると、片野が大きく息を吐いた。


「なんだよ、お前。沢村のこと…好きなんじゃないのかよ。」



自分で言って、辛くなった。何故だかは分からないが、自分で言ったくせに返事を聞くのがこわい。



「……分からない。」


片野は歩きながらうつむく。



「なんか、沢村……強引で、どうしたらいいのか分かんない。前の私だったら嬉しいはずなのに……」


良かった。


好きだけど、恥ずかしくて
とか言われたら、どうしようかと思った。


えっ？
何でだ？

別に片野が誰を好きだろうと俺には関係ないはずなのに。


「なんか言ってよ。」

黙っている俺に片野が言った。


「なんかって…何も言いようがねぇよ……。」