
変人を好きになりました
第23章 共犯者の正体
「社長、今日は少し寄り道して帰りたいんですが」
私がそう言うと書類に目を落としていた社長が顔を上げた。デスクに肘を置いて私をじっと見た。
そんな正面からまじまじと見られるとさすがに居心地が悪くなる。
「そうだね。記憶が戻ったんだ。色々な所へ報告しに顔を見せに行ったほうがいい。どこへ行くんだい? これを片付けたらすぐに送って行こう」
社長は高そうなネクタイを緩めた。
「いえ、大丈夫です。私ひとりで行けます」
「そういうわけにはいかないよ。秘書として同居人として面倒を見る義務があるからね」
社長が長い指で顎を撫でて私に笑いかけた。
「面倒って、私子供じゃないんですよ? すぐに帰りますから」
社長は首を横に振った。
「だめだ。これは社長命令だよ」
優しくて柔軟そうに見える社長だけど、根は物凄く頑固らしい。
結局、社長の車に乗せられた私はおとなしく窓から移りゆく風景を眺めていた。
由佳驚くだろうな。
イケメン好きな彼女のことだから社長、宿谷さんを見たらきっと目を輝かせて紹介してと言いだすだろうな。
そういえば黒滝さんのことは少し話したことはあるけれど、実際に由佳が見たことはない。
黒滝さん今なにしてるかなあ。
「どうした。古都さん。顔が真っ赤だけど」
運転席にいる宿谷さんが笑っていた。
いけない。
黒滝さんのことを考えるだけで体が熱くなってしまう。
「柊一くんが羨ましいね」
「そんな」
宿谷さんはからかっているのか、少し意地の悪い顔をしている。
「本当だよ。古都さんみたいに可愛い女性にこんなにも好かれてみたいものだよ」
「宿谷さんならいくらでも好いてくれる女性はいると思いますけど」
「……まあ、いなくはないかな」
含みのある言い方ではあったが、詳しく聞く余裕もなくて私は意味もなくこくりと頷いた。それに聞いて欲しくないような気がした。
私がそう言うと書類に目を落としていた社長が顔を上げた。デスクに肘を置いて私をじっと見た。
そんな正面からまじまじと見られるとさすがに居心地が悪くなる。
「そうだね。記憶が戻ったんだ。色々な所へ報告しに顔を見せに行ったほうがいい。どこへ行くんだい? これを片付けたらすぐに送って行こう」
社長は高そうなネクタイを緩めた。
「いえ、大丈夫です。私ひとりで行けます」
「そういうわけにはいかないよ。秘書として同居人として面倒を見る義務があるからね」
社長が長い指で顎を撫でて私に笑いかけた。
「面倒って、私子供じゃないんですよ? すぐに帰りますから」
社長は首を横に振った。
「だめだ。これは社長命令だよ」
優しくて柔軟そうに見える社長だけど、根は物凄く頑固らしい。
結局、社長の車に乗せられた私はおとなしく窓から移りゆく風景を眺めていた。
由佳驚くだろうな。
イケメン好きな彼女のことだから社長、宿谷さんを見たらきっと目を輝かせて紹介してと言いだすだろうな。
そういえば黒滝さんのことは少し話したことはあるけれど、実際に由佳が見たことはない。
黒滝さん今なにしてるかなあ。
「どうした。古都さん。顔が真っ赤だけど」
運転席にいる宿谷さんが笑っていた。
いけない。
黒滝さんのことを考えるだけで体が熱くなってしまう。
「柊一くんが羨ましいね」
「そんな」
宿谷さんはからかっているのか、少し意地の悪い顔をしている。
「本当だよ。古都さんみたいに可愛い女性にこんなにも好かれてみたいものだよ」
「宿谷さんならいくらでも好いてくれる女性はいると思いますけど」
「……まあ、いなくはないかな」
含みのある言い方ではあったが、詳しく聞く余裕もなくて私は意味もなくこくりと頷いた。それに聞いて欲しくないような気がした。
