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変人を好きになりました

第25章 日時を定めて

「わっ」

 ひょいと軽く持ち上げられた私はお姫様だっこをされていた。 
 暴れる暇もなくすぐそこのベッドにゆっくり降ろされる。優しく壊れ物を扱うような動作で柊一さんのしなやかな指先が私から離れた。

「そ、そんな疲れてないですよ」
「いや。ふくらはぎの筋肉が張っている。いつもヒールを履いて歩いているから今日はサンダルで歩きすぎて脚に負担がかかったんだ。いままで長時間角度のついた地面を歩いていたのに、急に平らな地面を長時間歩くと脚は疲れるんだ」

 なるほど。そう言えばそうかもしれない。少しふくらはぎがむくんでいる。
 でも、そんな細かい所を観察されるなんて嬉しくない。
「脚をこっちに向けて」
「え?」
 返事をする前に柊一さんはベッドに腰掛けている私の傍にしゃがみこんで、脚を揉み始めた。
「や、いいです。そんな。柊一さんにそんなことさせるなんて」

 申し訳がなさすぎて声が裏返った。柊一さんは気にする様子もなく黙々と手を動かす。

「……。んっ」
 もしかしてマッサージ師なのかもと思うほど柊一さんのマッサージは上手で、身体の芯が溶けそうになる。
 時々声が漏れてしまうけれど気持ち良すぎてそれを止める気すら起きない。なんでこんなにうまいんだろう。
 瞼が重い。

 体中の筋肉がほぐされて……いく……。

「……と、さ……。こ」
 遠くのほうで私の大好きな声が何か言っているけれど、聞き取れない。そして記憶がなくなった。
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