テキストサイズ

変人を好きになりました

第24章 それぞれの

 俺もあんな女の子から好かれてみたい。外見がどんなに醜くなろうとも、職を失ってとてつもなく貧乏になろうとも愛してくれるであろう女性に傍にいてほしい。
 古都さんは器用な方ではない。
 けれども、彼女を慕う人はたくさんいる。現に会社にきてから今まででもう社員の大半は古都さんに好意を持っている。男女性別関係なく好かれている。

 それは古都さんが不器用なりに本当に自分の気持ちを切実に伝えようとする姿勢があるからだろう。
 相手のことを考えて行動する。簡単なようで驚くほど難しい。

 そんなことを古都さんはやってのける。古都さん自身なぜ自分が人から好かれるのか気付いていないようだけど、またそんな所も魅力の一部なんだろうと思う。

「離したくない」
 思わず漏れ出た言葉に自分で飽きれる。
 離すもなにも、俺のものではないのに。一社員、一同居人。

 ただそれだけで。古都さんからすると社長でしかない自分の身をこれから努力次第でどうにかできるものでもないと思う。
 だが、あの日図書館で笑い合っていた4人を見て心臓に活力が生まれた。

 諦める必要なんてない。好きなように頑張る権利は誰にだってあるんだ。俺もできることはやってやろう。と思った。
 俺は本当に古都さんのことを好きになってしまったみたいだ……。
 里香みたいなやり方はしない。古都さんや柊一くんに負けないくらい堂々と二人の間に割って入ってみせる。
 そう決心すると胸が晴れて、夜景を映し出す窓をそのままにベッドに潜り込んだ。
 気持ちよく寝れそうな気がする。朝が来るのは楽しみなのは仕事以外にも生きがいを見つけたからだ。


「おやすみ、古都さん」
 隣りの部屋に向かって言うと再び俺は夢の中へ導かれて行った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ