
変人を好きになりました
第9章 たまご粥
「やめてください。私、空良くんだけを見るって決めたんです。黒滝さんも自分で選んだ恋人、婚約者がいるなら大切にしてあげてください」
黒滝さんの腕から強引に抜け出すと私は一目散に玄関を目指した。
「もう、私で遊ばないでください。関わらないで……。さようなら」
ドアノブに手をかけ、扉を出た。
扉が重い鉄のきしむ音と共に閉まっていく瞬間に振り返って見えた黒滝さんは迷子の犬のような目で私を見ていた。
「空良くん、おそくなってごめんね」
優しい黄色をしたどろどろのお粥を寝室に運ぶ。
空良くんは寝ているようでベッドの中で全く反応をしない。
ベッドの傍のテーブルにお粥を置くと、天使のような寝顔をしている空良くんの顔を覗き込んだ。
黒滝さんに抱きしめられてすぐに拒否されなかった自分が憎くなった。
空良くんが熱でうなされてる時に私は……。
空良くんの桃色の頬に手を添わす。愛しさが自然と込み上げてきた。
本当に、私は空良くんに惹かれてきているのだろうか。
「おかえり」
空良くんの手が私の手に重なって、大きな茶色の瞳が現れた。
「ただいま。少しは楽になった?」
「大丈夫だよ。古都、何かあった?」
潤いを帯びた目を瞬かせ、いつもよりゆっくりと空良くんは喋る。
「何もないよ。空良くんの寝顔が可愛いなって思って」
空良くんは何か感じ取ったのかもしれない。私の顔をじっと見てから、ふと表情を崩した。
「可愛いなんて言われても嬉しくないよ。かっこいいほうがいいな」
「ふふっ。空良くんはかっこいいし可愛いの」
柔らかい髪を撫でる。
「卵粥、待ってたんだ。食べさせて」
空良くんが体を起こして卵粥の入った器を指さした。
「遅くなってごめんね。はい、どうぞ」
スプーンにすくった卵粥に数回ふーふーと息を吹きかけると空良くんの口元に差し出した。素直に口を開く空良くんの口内にスプーンを進ませた。
「……ん。美味しい」
「当たり前」
舌を出して生意気を言ってみた。
「さすが古都だね」
「へへ」
普通に褒められると照れてしまう。
「古都、戻ってきてくれてありがとう」
「え?」
「なんでもないよ。はやくもっとちょうだい」
空良くんは黒滝さん並みに、いやそれ以上に勘が鋭い。
下手に誤魔化そうとしたり、嘘なんてつきたくない。
黒滝さんの腕から強引に抜け出すと私は一目散に玄関を目指した。
「もう、私で遊ばないでください。関わらないで……。さようなら」
ドアノブに手をかけ、扉を出た。
扉が重い鉄のきしむ音と共に閉まっていく瞬間に振り返って見えた黒滝さんは迷子の犬のような目で私を見ていた。
「空良くん、おそくなってごめんね」
優しい黄色をしたどろどろのお粥を寝室に運ぶ。
空良くんは寝ているようでベッドの中で全く反応をしない。
ベッドの傍のテーブルにお粥を置くと、天使のような寝顔をしている空良くんの顔を覗き込んだ。
黒滝さんに抱きしめられてすぐに拒否されなかった自分が憎くなった。
空良くんが熱でうなされてる時に私は……。
空良くんの桃色の頬に手を添わす。愛しさが自然と込み上げてきた。
本当に、私は空良くんに惹かれてきているのだろうか。
「おかえり」
空良くんの手が私の手に重なって、大きな茶色の瞳が現れた。
「ただいま。少しは楽になった?」
「大丈夫だよ。古都、何かあった?」
潤いを帯びた目を瞬かせ、いつもよりゆっくりと空良くんは喋る。
「何もないよ。空良くんの寝顔が可愛いなって思って」
空良くんは何か感じ取ったのかもしれない。私の顔をじっと見てから、ふと表情を崩した。
「可愛いなんて言われても嬉しくないよ。かっこいいほうがいいな」
「ふふっ。空良くんはかっこいいし可愛いの」
柔らかい髪を撫でる。
「卵粥、待ってたんだ。食べさせて」
空良くんが体を起こして卵粥の入った器を指さした。
「遅くなってごめんね。はい、どうぞ」
スプーンにすくった卵粥に数回ふーふーと息を吹きかけると空良くんの口元に差し出した。素直に口を開く空良くんの口内にスプーンを進ませた。
「……ん。美味しい」
「当たり前」
舌を出して生意気を言ってみた。
「さすが古都だね」
「へへ」
普通に褒められると照れてしまう。
「古都、戻ってきてくれてありがとう」
「え?」
「なんでもないよ。はやくもっとちょうだい」
空良くんは黒滝さん並みに、いやそれ以上に勘が鋭い。
下手に誤魔化そうとしたり、嘘なんてつきたくない。
