人生憑依。
第2章 醜い幸福
「っつ…やめ、離…っ」
じたばたする二宮。
その力は、あまりに小さくて
俺にかなうわけ無かった。
「んふ、冗談だって」
ぱっと離すと
顔を赤くした二宮は
俺をキッと睨んだ。
耳が赤い二宮は
目が潤んで
ほんとにびっくりした様子だった。
「何すんですか…変態っ」
馬鹿っと叫ぶ二宮。
俺はそいつと目を合わせた。
腕を拘束して
逃げないように間近で…―
「な、っ…ちょ、大野さんってば」
俺は無言のまま
目を閉じて、
彼の中に飲まれるイメージを浮かべる。
暗闇の中の隙間。
肉体と魂の隙間に手を伸ばす。
「や、あぁ…―!」
ふ、と力が抜けた。
その瞬間、目の前が白くなって、
不思議な感覚が俺を襲う。
―バタッ
倒れる音、それは他人事に感じた。
痛くもかゆくもない。
自分の体が倒れる光景を見るのは
あまりに滑稽だ。
「はは…」
その笑い声も違う。
…力が証明できた―