人生憑依。
第2章 醜い幸福
屋上に着くと、
青く澄み渡る空が見えた。
屋上は一番天国に近い、
そう思ってなんとなくこの場を気に入ってた。
「…あれ、あなた…」
後ろから声がして
そのほうを見ると
そこには会長の恋人、二宮が
日陰でゲームをしていた。
「に、二宮?」
「あなたもここに来るんですか」
「あなたも、っていうか俺が一番だから」
「いや、俺です」
ピシャリと言った二宮に
殴りかかりそうな拳を
背中に隠す。
そんなことよりも、
二宮に会えたのは
俺にとって好都合だった。
そもそも人間に憑依するには、
そのターゲットとなる人間が
目の前にいなければならない。
だからわざわざ会いに行く手間が
省けたのだ。
「…何やってんの?」
「ゲームです」
「だからそのゲームは何だって言ってんの」
「主語がなくてわからなかったですね。」
つん、とする態度の二宮。
会長はどうやって落としたのか。
はたまた、二宮はどうやって会長に惚れたのか。
「で、?」
「…マリオです―あっ」
ひょい、とDSを取り上げると
二宮が手を伸ばす。
こいつ、どんだけ恵まれてんだろ。
「お、大野さ…」
二宮の両頬を手で挟むと
自分の顔へ寄せた。