人生憑依。
第2章 醜い幸福
憑依できたことを確認すると俺は
自分の体を日陰に寝転がせて
早速、屋上を降りた。
体が軽いような、
すごく動きやすくて心がうきうきする。
ふ、と腕にあった腕時計を見る。
もう、9時を回っていて
1限が始まっていた。
二宮なら
授業ちゃんと出てるんだろうけど
めんどくせーな…。
―ガバッ
「ぎゃ―…っ」
背中に強い衝撃を受け、
倒れる俺。(二宮)
「くっ…な、何―」
「にの!」
「は…っ?」
満面の笑顔の暑苦しい顔。
さっき会った、相葉だ。
密着したまま離れてくれない。
「あ、あいば…?」
「なぁに、にのってば驚いちゃって。
まさか俺のこと考えてた?」
「な、!」
なんだ、こいつ。
自意識過剰人間てやつか。
俺は無性に苛々して
唇を噛み締める。
すると、相葉はくふふと笑った。
「図星?」
「違うし!」
即答してしまう俺。
相葉は少し驚いた顔をする。
―…しまった。
いくら肉体を被っても、
変だと思われないようにしよう。
怪しまれては、後が悪くなる。
「…っ、あの、と、とにかく…ど、どいて、ください…!!」
あいつの口調を
思い出しながら真似てみる。
あまりにもぎこちない噛みまくりの台詞となってしまった。
「あ、」
「ん…?」
いきなりと、徐々に近づく相葉の顔。
反射的に体が強張った。