人生憑依。
第3章 最低思考
「……」
「っ、…く…っ」
「―…わかった。話すから」
二宮の頭を撫でる。
そして渋々、
全て話した。
俺の力のこと、気持ち、動機…―
「…なるほど」
少し低くなる声に
俺は二宮の顔を見る。
すっきりした顔をしていた。
…少し前まで泣いてなかったか?
二宮の顔はまるで
泣いてたのが嘘のように…
―あ。
「お前…っ嘘泣きだったろ!」
「今更気づいたんですか?」
二宮はケロッと言う。
「ふざけんなっ」
「ふざけてなんかいません!」
殴りかかろうとした俺を
抑えながら
二宮は目をぎゅっと瞑って叫んだ。
「言ったことは全部本当です!…大野さんのこと憎いです!それにずるいと思ってます…!」
「ずるい…?」
「……」
無言のまま頷く二宮。
「…その、憑依する力で俺を利用して…っ簡単に好きな人と身体を重ねられる大野さんは…っずるいです!」
今度こそ、二宮が泣いた。
声を出して泣いた。
悔しいと羨ましいと憎いと悲しいと怒りとかいろんな気持ちの混ざった涙が
俺の腕に滴り落ちる。
「泣き虫」
「うっさい…あんたのせいだ…っ」
―ずるいなんて言われても
この欲望を崩すわけにはいかないんだよ
そう心で呟いた。