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人生憑依。

第1章 抱く心情




会長は崩れ落ちて5分後に
やっと着替えはじめた。

少し震える指で必死にボタンを留めて、
ネクタイを締め、制服のジャケットを羽織ると
いつもの会長の姿になった。



「で、あなたは何しにここに来たんですか?」

「…それ俺の台詞」

「俺達は見ればわかりますよ、ねぇ?翔さん」



語尾にハートマークがつきそうな
笑顔で会長に微笑む。
会長も、苦笑まじりに笑った。

それが、俺の神経を
逆さまにひっかく。



「…君、大野くんだよね…?」



頬を赤らめたままの会長は
俺をじっと見つめる。
綺麗な瞳に俺だけが映ってると思うと
少し、ドキドキした。



「…ん」

「絵の上手な人で、美術大学から推薦来てるんだって?すげーよな」



にこにこ笑う会長。

笑顔が可愛くてつられて俺も笑う。
会長にすげーよな、って
褒められたというか、なんというか。
自然と口角が上がった。



「え、推薦…?」



二宮が目を真ん丸に開いて
俺を見つめる。
茶色の目が犬を思わせた。



「…すげーんですね、あなたって」



ほぼ棒読みな二宮。
ああもう、なにこいつ。
なんていう苛立ちを必死に抑える。



「にの、ひがむなって」

「な、ひがんでません!」



はははって笑う会長。


会長が傍にいる二宮の人生は
近くで会長が笑ってくれるぐらい幸せなのだろうか。



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