私のはぐるま
第5章 解放
大学に進学する頃には、さまざまな男と遊びまくった。
特定の男を作らず、夜の蝶々のように妖艶でつかみどころのない女に変わってしまった。
その情報は地元の友達から、哲也の耳に入り何度か会いに行ったがその話を信じようとせずに今まで話をしてこなかったのだ。
傷だらけの優南を見た哲也は自分がそばに居れなかったことを後悔した。
「優南、本当に悪かった。俺がそばにいてやらなかったから・・」
「てっちゃんは、関係ないよ。私の話、いろんな人から耳にしていたでしょ?自業自得なの。全部あたしが悪いの。せっかく地元から離れたのに、自分は何も変わっていない。」
哲也の腕に力が入る。
「これからは、俺が守るから。優南の全てを守るから。」
「てっちゃん、何言ってるの?関係ない。だいたい、今の私は昔の私じゃない。もうてっちゃんが知っている優南は死んだのよ。」
ドンッ!!!
哲也が壁を想い切り叩くと、「ふざけるなっ!!!」
「俺はそんな噂だの、過去のことだの関係ねー!今、俺の目の前にいるのは幼馴染のドジで天然で強がりで、でも寂しがり屋の一之瀬優南で、お前の目の前に立っているやつは一之瀬優南のことを誰よりも理解して、誰よりも愛している木村哲也だ!わかったか!」
「な、なに言ってるの?からかうのはよしてよね。」
「至って本気なんだけど。」
「こんなに汚いあたしなんて、ほっといてよ。傷だらけで、やってることも変わらない。気付けば不倫してるしね。はは・・・もうあたしなって生きている価値もないの。てっちゃんはキレイだから、あたし色に染まらないで?」
「俺がお前の俺色に染めてやる。だからもう、一人で頑張るの禁止な。」
「てっちゃん・・・」
優南はこの時、勇のことを思い出していた。
彼から本当に逃げられるのだろうか。と。
哲也を愛することは許されることではないということを。