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身代わりH

第14章 *増していく想い

シンと静まり返り、先程とはうってかわって緊張感が走る館内。




だけどお兄ちゃんはそれに臆すことなく、慣れた手つきでマイクの位置を直すと、正面を見つめた。




“-3年A組、楠拓真。〈若年層の政治不参加について〉の弁論を始めます”




…やっぱりカッコイイよ…お兄ちゃん…。




堂々としたお兄ちゃんの立ち居振る舞いにドキドキしながら、あたしはほぉーっと溜息をつく。




すると、




「先輩、今日もカッコイイ~」




「総会でもないのにこんな長い時間眺められるなんてラッキー♪」




というヒソヒソ声が後ろから聞こえて来た。多分隣のクラスのコ
だ。




更に斜め前で爆睡してた2年生もいつの間にか目を覚まして壇上を見上げていた。




-お兄ちゃんが前に出ると、いつもこうして静まり返り、たいがいの人が耳を傾ける。



あたしはこの時間が好きだった。

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