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身代わりH

第14章 *増していく想い

-体育の時間に見つめるのもダメ、サッカー部を応援するのもダメ…家の外で活躍するお兄ちゃんを出来るだけ長く見ていたいあたしにとっては、唯一お兄ちゃんを見ていても怒られない、貴重な時間だった。




“昨今、大きな選挙が行われるたびに、若年層の政治不参加が各マスコミを通じて報道されている。過去の事例を挙げると、…”




舞台の両脇についたスピーカーから、つかえることなくスラスラと続くお兄ちゃんの声が流れてくる。




これまでの先輩達と違い、お兄ちゃんは原稿をほとんど見ずに正面を真っ直ぐ見据えたまま、論説を続けていた。




…この声が好き。




スラッと伸びた腕も、肩のラインも、少し顔にかかった前髪から覗く真剣な眼差しも。




-全部好き。




今目の前の光景を頭に焼き付けておきたくて、あたしは目をつぶった。




“その解決策として、政府や自治体はいろいろな対策を講じている。例えば大阪府…”




ピラリ、とお兄ちゃんが原稿をめくる微かな音が聞こえた。

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