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身代わりH

第16章 *…実行

「そんなカッコじゃ自分の教室にも戻れないだろ。よく考えろよ、バカ」



「……ごめんなさい…」




口調はきついけど、お兄ちゃんの優しさが伝わって来た気がして、あたしはぎゅ、とジャージを抱き抱えた。




「いいから穿いてすぐ戻れ。で…」




お兄ちゃんはそこで言葉を区切ると、スッと耳元でこう囁いた。




「放課後、穿いたままでいいから返しにこい。-教室で待ってる」




ドキンッ




甘い言葉に胸が躍る。




「…は…い…」




あたしは嬉しくて頷くだけで精一杯で、お兄ちゃんが戻って行った後もその場に立ち尽くしていた。




…夢みたいだよ。




学校内でお兄ちゃんがこんなに優しいなんて…。




…腕の中のジャージは、お兄ちゃんの香りがした。

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