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身代わりH

第1章 *私とお兄ちゃん

「拓真~!カッコよかったよ!はい、タオル」



「お、サンキュー」



……また、彼女できたんだ…。



無邪気に笑い合う二人の声が聞こえて、本当は聞きたくなんかないのに、あたしは背後に意識を集中させていた。



「美紅、今日ウチ来いよ。親いないから」


-あたしの時と違って、明らかに優しい声。



だけど不自然に大きめな声になってることは誰も気付かない。



“気ぃ使えよ”



お兄ちゃんは暗にあたしにそう言ってるのだ。寄り道して遅くに帰ってこいと。



そんなのも、慣れっこ。…いつものことだから。



そう思わないと、やってられない。



あたしは、胸がキリキリ痛むのを感じながら、体育館を後にした。

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