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身代わりH

第1章 *私とお兄ちゃん

だけど、そこにあったのは射るように鋭い視線で。



「お前、ジロジロこっち見てんなよ。気色わりぃ」



「-!…ごめん…なさい」




あたしにしか聞こえないようにボソッと漏らした声は、見事にあたしの胸に突き刺さった。




「学校で話し掛けんなって言ってるだろ」



さもうざったそうにそう言い捨てて、足音が遠ざかって行く。



「………」



あたしはその場に凍り付いていた。



…でも、いつものこと。



「…雅?どしたの?」



数歩前を歩いていたユミちゃんが振り返った。




「ううん、なんでもない」



無理に笑顔を作ってユミちゃんに追い付こうとした時。



横をきつい香水の香りが通り過ぎた。

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