テキストサイズ

身代わりH

第2章 *思い出

***

『ごめん、今日先約があるんだ!
  アキコ』


『また今度誘って!  サリナ』


…ふう。




学校帰り、最寄り駅に着くと、あたしは携帯の受信メ-ルを見てため息をついた。



…みんな捕まらない。

お兄ちゃんと新しい彼女がいる家に帰るのはすごく嫌だけど、閑静な住宅街の多いこの駅では女子高生が一人で夜まで暇つぶせる場所なんてあるわけもなく、あたしはコンビニや本屋で少し時間稼ぎをしてから、仕方なく家に帰ることにした。



…人の影が細長く伸び始めた、夕焼けの時間。



ロータリ-を抜け、夕食の買い出しに来た主婦でにぎわう商店街を歩いていると、おつかい帰りなのか、手をつないで歩いている幼い兄妹とすれ違った。



ちっちゃい女の子の笑顔が、とても無邪気で幸せそう。



…昔のあたし達も、あんなだったのかな…。



-昔のお兄ちゃんは、すごく優しかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ