テキストサイズ

窓桜

第1章 1

「・・・・

なんなんだよ。姉貴はなにが言いたいんだよ。
俺、別に姉貴に隠し事なんて・・・してない。
なのに、なんでそんな顔すんの」

泣きそうな顔の祐に言われて気がつく。笑っているのは口だけだ。口から上に力が入らない。
昔からの癖だった。祐が何か自分の目に入らないところで何かをしてると口から上が凍る。
今もこんな事があるなんて、

「キス、したの?」

「してない、よ」

「ファーストキスは誰なの!?」

「まだ・・・だよ」

「ファーストデートは!?ファースト手つなぎは!?ファーストセックスは!?」

「・・・」

「全部知らないどこかで、あったことなのっ!?」

「許して・・・」

急に良く知ってるシャンプーの匂いがふっと鼻を掠めた。ふあっと浮くように体が持ち上がる。

「柚良、許して・・・」

ああ、やっぱり。もう、あなたには私は必要ないんだね。
私の名前を、こんな時に呼ばないで・・・・
頬は、流れるように出てくる涙をただ受け止めるだけだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ