オタクのペット
第15章 譲れないワガママ
「…結婚したい」
「イエス」
……えっ?!
今、凄く小さな声で何か言ったから、とりあえず気持ちが高まっちゃて「イエス」と弾みで言ってしまったけど。
「永田、今…」
永田は目をギュッと強くつむったまま苦しそうにしていた。
「俺、おまえと結婚したい。ダメかな?」
自分のこの先の一生が、永田の背後に映画みたいに映し出された。
早送りみたいに、映し出されて…。
不思議な事に、笑ってるの私。
笑ってる私の表情を見て、永田が優しく笑ってるの。
「幸せって…私の幸せって、永田と居て…違う自分に変わっていく事なの…?」
私は涙が溢れてしまった。
「過去がどうだったからよりも、ただ今はトシコを幸せにしたくて…それが俺のどうしても譲れないワガママなんだ…」
結婚したら幸せ?
だって、隣りであなたが笑ってくれているから。
子どもを抱き締めたら幸せ?
だって、隣りであなたが笑ってくれているから。
喧嘩したり、悩まされて、病気で伏せる事があっても幸せ?
だって、隣りであなたが笑ってくれているから。
何年も何年も繰り返し、同じ出来事が起きても、それも幸せ?
いつだって私の隣りで、永田は私に笑いかけている。
だから、私は安心して彼の胸に頬を埋める。
私の幸せは、永田の側に居られる事。
彼が笑顔で居られる事。