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オタクのペット

第9章 意外とね

もやし炒めは、何故だか永田が作ってくれた。

何か…こういうのって。

あまり私の理想の光景じゃない。

「塩と胡椒と…」

素直に嬉しいと感じられない私は、自分が作った味噌汁の味をみる。

「永田ってさ、意外と家庭的ってやつ?」

私はそんな姿が、あまりにも不自然で。

「自分で俺は何でもやるだけだ」

火を止めて私を見る。

「トシコは?」

「私は違う。家庭的な自分なんて思われたくない。だからこうしてる自分を本当は恥たくなる」

「何もかも人にやってもらうのが、理想?」

「そうじゃなくて、自分の事は自分だけでやりたいの」

うっとうしい。

こういう話になると、絶対に私が非常識みたいに捉えられるから嫌なのに。

「安いもやしを買い物して、味噌汁の味付けみて。それはおまえにとったら苦しみなのか?自分が選んだ人生なのに?」

「自分が選んだから、苦しみだって耐えられんでしょうが。選ばすとも苦しまずとも、耐えられる自由でラクな生活が出来るなら、とっくにそうしてるっての!」

うるさいな。

「思想を強く語るわりには世間を、他人をなめてるな。おまえって」

「なめてない。ただ分かってもらえない、私を否定する人は極力、身近から居なくなって欲しい。理解者だけ居ればいい」

そうやって、今まで我慢しながらやってきた。

「無理だな」

永田は皿にもやし炒めを盛って、ちょっとだけ取って食べる。

そして、その残りを私の口に入れる。

「美味しいか?」

意外と美味しい。

「うん」

「美味しいか不味いかしかないんだから。否定されたからって、そこまで意固地になる事かって、俺は言いたいね」

「意固地だって。あんたかのが意固地だろ」

「おまえだって他人を否定するくせに?逆にさぁ、否定された方が先が見える事のが、俺は多いと思うんだけどね」

「うるさい!うるさい!私を語るな!」

私は、おたまを片手にジタバタと苛立ちを身体で表現した。

「ほら、早くメシ食べて、俺をイカせろ」

ムムムッ…ムカツクーーー!








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