あたしは被害者
第9章 どっちもぶっ壊す
『ガチャッ』
19時にもなると
もう真っ暗な空。
家はもっと暗いかと思ったら
リビングへと続くドアの隙間から
光の筋が射し込んでいた。
「ただいま~……」
「あ、おかえり~」
ドアを開けると
ふわっとオリーブとジェノバ
の香りが体を包み込んだ。
いいにおい。。
「あれ……ママ
帰ってたの?仕事は?」
料理が得意なママ。
今夜の夕飯は
ジェノバソースのパスタのようで、
皿にパスタを盛りながら質問に答えた。
「今日は野口さんに
変わってもらったの!
たまには二人で家のご飯も
いいでしょ?」
そう言いながら
フライパンを水で冷やす。
じゅぅ~!!
水に触れた途端に
ぶわっと白い煙がママの眼鏡を
曇らせた。
たまに
ほんとにたまにママは眼鏡をかける。
あたしはママが眼鏡をかけた
姿が少しだけ、好き。
似合ってるもん。
「野口さん?
あー、あの目がおっきい人?」
ママからパスタを受け取り
テーブルへ。
「そーそー。
ママと歳が近い人。」
あたしがフォークを出す間に
ママは素早く
自分とあたしの分の飲み物を
テーブルに置いた。
あたしはやっと鞄をおいて
「「いただきます」」