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あたしは被害者

第6章 ママの彼氏

「笑みちゃーん、
ママちょっと
出かけてくるから〜」


ママがそう言うと

初めてドアの閉まる音が
聞こえた。


あの男と離れられなくて
一緒に出たんだね。

どこ行くんだか。



…ムカつく。



ママの彼氏の存在が

まるで
あたしの『パパ』の
存在をけなしているようで、

『パパ』よりも
あの男の方がいいって
主張されているようで

耐えられない。


たしかに

パパは暴力的で
怖い人だったこと、

今でも覚えてる。


でもパパはあたしの
たった一人の『パパ』
なんだもん。


自分を作ってくれた

パパとママの
ラブラブなところ
見たいよ。


あたしは窓から
ママの車が出て行く
ところを見送ると、

ベッドの下に落ちていた
ヒョウ柄のクッションを

勢いよく蹴り上げた。


いつもはきちんと
ベッドの上に
乗っているお気に入りのクッション。


そのクッションは
腰くらいの高さの本棚に
ポフッと当たって

やっぱり床に落ちた。


そのクッションを
何分もじっと見つめる。

なにも考えずに。

なにも考えない時が
1番落ち着く。


だからあたしは
トイレとかお風呂で
長いしてしまうんだ。


何分経っただろう。


かたまってしまった
右足がやっと
一歩前へ。

クッションを拾って
ベッドへ投げた。

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