あたしは被害者
第8章 5人目のターゲット
「えみ~!」
「お昼いくぞぉー!」
しほりやこと美の声と
ほぼ同時にあたしも正也に声をかける。
「まっさや~!
一緒にお昼食べよ?」
「へ……?」
まさか自分が声をかけられると
思っていなかったのか、
力の入っていない声をもらした。
「えみー?」
教室をすでに出ようとしていた
しほりがあたしの方へ
「ちょ、こ、こいつと……?」
一応コソっとは言ってるけど
この距離なら正也にも聞こえる。
ピクッと眉が動いて
だんだんとうつむく。
……だからこーゆーのがムカつくんだって…
「うん!
一緒に食べる~」
「えー?やなんだけどうちら……」
そこにこと美も登場。
「ん?二人は二人で食べて?
あたしは正也と食べる~
ね!正也?」
笑顔で正也をのぞきこむと
ふっと目をそらされた。
「ちょ、えみ!
そんなのいいから購買行こうよ!」
「今日あたしお弁当だし~」
「……もーえみ…
いいよ、こと。えみがわがままな時は
絶対引かないもん」
「えー……」
よくわかっていらっしゃる、
しほりさん~
「えみ~!」
また違う女子の軍団から
声をかけられる。
その軍団をしほりたちは
事情と愚痴を漏らしながら
引き連れて教室を出ていった。