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あたしは被害者

第8章 5人目のターゲット




「あ、あの……」




「…前髪……切れば?」

「え?」


少し癖がある細い髪。

前髪は目が丸っきり隠れて
しまうほどに伸びている。


「え、あ……こ、これですか……」

「見えづらくない?」


ハンバーグを頬張りながら
正也の前髪をじっと見る。


「あ、あの……そ、そんなに
見ないでくださ、い」


「え?あ……」


まっかっか……。


「もしかして……
恥ずかしいから伸ばしてるの?」


前髪をそっと触りながら
またうつむいて
ゆっくりとうなすいた。




……なんつーピュア男なんだよ。。
そんな顔赤くして……。


き……もい……


……かも……しれなくもない……かも



ほんの数時間であたしは
正也を

『きもい』『うざい』
なんて思うことができなくなっていた。



いつものあたしじゃない。

黒いあたしはどこ?

この男の心、ズタズタにするんじゃないの?

それを見て楽しむんじゃないの?

相手を加害者にして楽しむんじゃないの?

かわいそがられるのを楽しみにしてるんじゃないの?

あたし、なにしてるの?

こんなことしてちゃ、だめ。



だめ。


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