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さきゅばす

第3章 夜のクラブ

2曲目の演奏も終わると、次はいよいよハルの番

舞台の準備のためしばらくの空き時間がある


次第にナツさんは口数が減り、とうとう何も喋らなくなった

どうしたんだろう……

黙って舞台を見ていると、照明が落とされて花火が映像に映った

いくつもいくつも不規則に打ち上がりながら、音は綺麗になっていく

少しずつ音は丸みを帯びて、ある音は低音へ、ある音はメロディーになる

スクリーンの陰で踊るように、ハルが機械を操作している

カッコイイ…

チラリとナツさんを見ると、まるで神様に祈るように両手を組んでいた

音楽はまた花火の音に戻って行く

そして、わずかなベースラインだけ残して花火も止む

突然映像が真っ暗になった

皆がパフォーマーの方を見る

ハルはいつの間にか消えていた

舞台のグランドピアノがライトアップされるとそこにハルが座っている

ハルは唯一残っているベースラインに合わせて、ピアノを弾く

心に響き渡る音

まるで胸が共鳴しているみたいだ

複雑なスケールのあとに譜面台においてあるiPadみたいな端末を触る

近代的な機械音がピアノの音と調和して、また新しい曲を作っていく

そして花火も絡み合い、最後に大輪の花火で締めくくった


会場はスタンディングオベーション

ナツさんも満面の笑みだ

私も涙が勝手に出てくる

ハルには優勝して欲しいと心から思った

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