さきゅばす
第5章 ライブのあとで
5つ星ホテルのスイートルーム前でベルを鳴らす
大きな扉が開くと、私の胸にナツさんが飛び込んできた
「どうしよう! 桜ちゃん!」
「ど、どうしたんですか」
「ライブで音外しちゃったら、どうしよう!」
「え、ええっ!」
私の家のリビングより広いエントランスで、右往左往する
「ナツさん、落ち着いて!
手に何を持っているんですか?
……なんで櫛を持っているんですか!?
とりあえず、櫛は置いてください!」
「……どうしよう。ああなんで、中国語でトークするなんて言ったんだろう。間違ったら……ぼ、暴動が起きるかも」
「そんなわけないじゃないですか。みんなファンなんだし……」
私は慄いて震えるナツさんをソファーに誘導して、落ち着かせようとした