テキストサイズ

さきゅばす

第5章 ライブのあとで


ライブの流れが書かれた紙を、不動の視線で穴ができるぐらいじぃっと見る

そしてナツさんはつぶやく

「こんなに歌えるわけないじゃない……」

「!」

あと2時間もしたらライブが始まるんですけど。

「この曲の歌詞なんだったかなぁー」

「!!」

あなたの持ち曲でしょ。

「フンフンフフン……違う。フンフンフフフン?」

「!!!」

フンフンフフンで合ってるよ!

私はすぐにケータイを取り出して、この状況をハルに伝える

『ナツさんがライブ前にトランス状態に。どうすればいい?』

するとすぐに返信があった

『無理矢理でも舞台に立たせろ』

こんな状態で!?
と、驚きつつも、時計をみるとあと90分しかない

「ナツさん。そろそろ会場に行きましょう」

手を取ると、ナツさんは振り払った

「いやだ! 今日は無理!!」

そう叫んで、トイレらしき部屋に入ってしまう

「え!? いやいやいや……ナツさん!?」

ドアを開けようとするが、カギがかかっている

「ちょっと、カギを開けてください! もう時間がないんですよ! お客さん来てるんですから!」

「あ、今日は体調が悪いから、帰ってもらって……」

「そんな簡単な話じゃないんですよ!」

「……」

マズい。この人、本気でやめる気だ

私はスタッフを呼ぶために電話を探す

ちょうどその時、エントランスのベルが鳴った

急いで扉を開けると、そこにはアキがいた

ストーリーメニュー

TOPTOPへ