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｢別れよう｣

その言葉で彼女の恋は終わった。
どうして、なんて彼女にいう勇気はなかった。
ただ、去っていく彼の背中を見送る事が出来ず、彼女･安堂雅はその場に佇んだ。


―――ﾋﾟｼｬｯ...


雨音が響く..雨が降り出したのだ。
周りの人々が急ぎ足になる中で、彼女は一人近くのカフェの屋根で雨宿りをした。

『失恋の日の雨...っか』

一人呟く彼女。
すると...―――

「君も失恋..したの??僕と同じだ」

それまで隣に自分と同じ考えで雨宿りをしていた人がいたなんて気付かずにいた彼女は、ハッとなって横を見ると急に恥ずかしくなってすぐに目を反らすものの、彼女はその言葉をそのまま問いかけてみた。

『その言い方だと、お兄さんも...』

「うん。さっきフラれちゃったんだ、別れようってたった一言でね」

――同じだ。
彼女はすぐ気が付いて驚いた表情を浮かべた。
すると、隣のお兄さんの見方が赤の他人から何か、自分に近いものへと変わった...。

『私も..私もお兄さんと同じ言葉でフラれたの』

「...そっか。でも、君みたいな可愛い子フる男ってどうかしてるよ」

『そんなこと..っ、だったらお兄さんだってそんなに格好いいのに...フった女の人見てみたいですよ!』

「ははっ、ありがとう..そうだ、良かったら暖かい所でもう少し話ししないかい??まだ雨も止みそうにないし...」

真後ろのカフェを指差してお兄さんは彼女にどうかな?、という表情をするものだから、彼女は少し迷うもののこのまま此処にいても風邪を引いてしまうと考え、お兄さんの行動に頷いて動じた。