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仮面な人たちの恋愛夢小説

第3章 まだ見ぬお宝(D)

──あっさりとファーストキスを奪われた栞那は少し目を見開き、切ないような何かまだ物足りなさそうな表情の海東を見詰める。
栞那は海東に手を伸ばし頬に触れると海東も栞那の手に触れる。

『そんな顔されると困るんだけど』

「僕を嫌いになるんじゃないかと思ったらこんな顔しか出来なかった」

『馬鹿みたい。ただちょっと初めてが泥棒っていうのが気にかかっただけなのに‥』

「じゃあ泥棒として見なければいい」

『は?』

「僕を一人の男として見てほしいってことさ」

そう言って海東は栞那にかかっていた手錠を優しく外し解放する。
海東は続ける。

「それとも、泥棒の僕じゃやっぱり駄目かな。無理もないさ、だって僕は君に取って窃…っ」

海東が言葉を言い切るよりも早く栞那が動き、唇を塞ぐ。

『それに以上言ったら逮捕するから』

「それは困る」

互いに笑い合い、ふとした瞬間にまた重なり合うシルエット──
翌日、元の日常に戻ったかのように見えた二人だったが──

『海東!?』

「やぁ、待ちくたびれたよ」

ある建物の一角に身を隠す影が二つ──
いつになく怪奇な笑みを見せる海東だが、彼女はその意味を理解していた。
そんなことを思っていると、海東から何かを受け取る。

「僕から君にプレゼントさ。開けてみたまえ」

小さな箱の中にはシルバーリングが…。
彼女は驚き言葉を失いただ海東を見詰める。
それを満足そうに見て海東はいう。

「愛してる」

彼女が何も言わずに明後日の方向を向いているのを見ると、海東は迷わず彼女を引き寄せて唇を重ねる。
彼女の頬には、悔しさと嬉しさを纏った雫が伝っていた…。

         まだ見ぬお宝 END

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