仮面な人たちの恋愛夢小説
第4章 心とココロ(剣)
十一月十一日。兄永眠。
事故だった。という他なかったのか。
得体の知れない怪物に襲われ、兄が乗っていたバイクと車の衝突が致命傷となったのだとまだ7歳と幼かった彼女はきかされていた。
何故自分の兄さんが。
そう思わない日は一日もなかった。
彼女は兄が好きだった。
口数少ないものの、誰よりも自分を見ていてくれた。
兄が亡くなってからも両親に何ら変わりはなかった。
家族全員が共通なこと。それはただ心が、ぽっかりと穴が開いて何かが足りないと叫んでいる。
『行ってきます』
あれから十三年。
彼女・九条凛は二十歳になり、今は兄が通っていた大学に通っている。
何ら変わりのないいつもの大学への通学路で、彼女に魔の手が降りかかる。
突然のことに彼女はただ来た道を走り戻って行く。
走りながら彼女は心の中でもいう。
”あの日兄の命を奪った怪物が、今度は自分を追ってきている“
そんな思いを過らせていると、怪物が足元に伸ばしてきた何かに捕まえ転ぶ。
必死に逃れようとしてもがくが脚に絡み付くそれは離れるどころかむしろ更に巻き付いてくる。
『来ないで!』
彼女に刃が向けられたその時だった。
頭上を通り過ぎバイクごと突っ込む一人の男。
着地し、吹っ飛んだ怪物はすぐに体制を変えて逃げていく。
「‥逃げたか」
呟く男。
振り返ると恐怖で怯える凛にすぐに駆け寄る。
「怪我はないか」
『は、はい‥』
「そうか…良かった」
男からして彼女は中学生かいいところ高校生にしか見えなかったのか、少し子供を見るような眼差しで彼女を見ていた。
160㎝にも満たない彼女の身長からしてそう見えても仕方ないのだろう。