テキストサイズ

夜会で踊りましょ!!

第3章 柾季の思い

「そうだ!柾季。今日、一夫を勝手に使っただろ!何をしに出かけたんだ」
 祖父がにらんでいる。

「狐塚まで乗せて行ってもらった。遥香達が浴衣着に来てくれるって言うから…」

「浴衣を着に行ったのか?」

「うん」
 ご飯をパクパク口に運ぶ。

「うん?」
 キラリと目が光る祖父。

「あ!すみません。はい!」
 柾季は急いで言い直す。

「そうだ!返事は『はい!』っと大きな声で言う。声は腹からだ」

「はい、師匠」
 食べる手を止め、従業員達が返事をする。


「ねー母さん?タチバ様って何?」
 柾季は黙々と食事をする母に質問する。

「タチバじゃなくて橘様ね」

「そーそー、それ」

「昔ね、氏神神社に橘(たちばな)様って言う姫巫女がいてね。その姫巫女が若い男女の縁結びを助けた伝説があってね、その伝説から、夏に浴衣をきた14歳の子が踊りを奉納してるの」
 母は簡単に説明してくれた。

「へー…こっちないよね?」

「昔は、どこでもしていたみたいだけど、最近は星見山(ほしみやま)市だけね」

「そうか…」
 ちょっと、残念そうな顔の柾季。

「なに?柾季も踊りたいの?」

「踊りたい!」
 身を乗り出す柾季。

「歩睦が浴衣を着てちょっとだけ踊ったのを見て、オレも!って思った」
 目をキラキラさせている柾季。

「わかったわ。いい浴衣を仕立てて夜会に参加しましょうね!」
 接触的な息子を見て乗り気の母。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ