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それで、また会ってる。

第1章 冷たい手



部屋着に着替え、リビングへ向かう。奥へ進んで食卓につくと、何とも純和風の食事が並べられていた。
「すごくない? ちゃんとイチから作ったんだよ」
「へぇー! 恋人らしいことできるじゃんか。見直したよ」
早速手を合わせて味噌汁から頂くと、お世辞ではなくかなり美味しかった。
「多分、俺が作るより美味いよ」
「本当? いい主婦になれる?」
「あぁ。いい主夫になれる」
適当に返したけど、本題を思い出す。

「そうだ、話戻るけど何で黒髪にしたんだ? 大いにけっこうだけど」

初めて会った時の金髪の印象が強すぎるせいか、正直なところ一気に地味になったと思う。
でも彼の顔立ちならむしろ黒髪で落ち着いてる気もするし、違和感はない。
「いや~、怒らないで聞いてほしいんだけどね。今日学校に行ったんだ」
「怒る内容じゃないだろ、むしろお前に関したら偉い……」
「違うんだよ。校門くぐったらさ、教師に髪色のことで止められたんだよ。そこで指導になって帰らされた。だから学校は行ったんだけど教室には行ってない」
なるほど、と納得した。
でも怒る気は起きず、まぁそうなるよな、という感想が一番だった。
「仕方ないな。それでちゃんと髪戻したなら、やっぱり偉いじゃないか」
そう言うと夕都は少し驚いた顔を見せた。でもそれは一瞬で、すぐにいつもの小憎らしい態度に変わったけど。
「フ、いつもはスプレーで一時的に誤魔化してたんだけどね。俊紀さんのために直したんだよ、俊紀さんとずっと一緒にいたいから」
「自分のためだろ、全く……」
ああ言えばこう言うんだから、本当に困った子だ。
……でも。

「ちゃんとネクタイしてるし、これから真面目にやる気なんだな。偉い偉い」
「そうだね! まぁ俊紀さんが知らないだけで元から誠実ではあるんですけど」
「そうか。じゃあとりあえずピアス外せよ」
「え? ……あ、そうだね」

夕都は呆然としながら自分の耳を触っている。
これは絶対に気づいてなかったな。






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