それで、また会ってる。
第1章 冷たい手
この状況は────。
完全に密室となり、回りには湯気が立ち上っている。ただでさえ暑いのに、このシチュエーションは熱を倍増させた。
尋常じゃなく焦ったけど……冷静に、よーく考えてみると俺は何も悪くない気がする。ドキドキするのはおかしい。
「あーあ、服ビショビショじゃんか。言っとくけど、お前が強行に及んだ末の結果だからな。とりあえず早く着替えに行けよ」
夕都のワイシャツはビショぬれて、所々肌の色が見えている。しかし冷たく声をかけても、彼は腕の中から動こうとしなかった。
「ちょっ、どうした?」
「俊紀さん超イイ匂いする……」
「うわっ、押すなって!」
心配して損した。夕都は身体を預けてすりすりしてくる。これだけ見ればただの変態だ。
「俊紀さん、予定を変更して! 俺も一緒に風呂に入っていい?」
そう訊くやいなや、夕都はズボンを脱ぎ始めた。
まだ何も言ってませんけど……!
驚きのあまり動けない俊紀の前で夕都はどんどん服を脱いでいく。とうとう最後の下着まで脱ぐと乱暴に脱衣場に投げ捨てた。
「何してんの……」
「服脱いだ」
それはわかる。ナメてんのか?
夕都はシャワーを出すと、俺の身体についた泡を流し始めた。 ついでなのか自分の身体も洗って、終わると普通に床に正座した。
「ところで、ちょっといいかな? 提案というか、思ったことがあるんだ」
「ん?」
「カップルで全裸。やることは一つじゃない?」
夕都は真剣な表情をしながら非常に危ないことを口走った。
「一応訊くけど……冗談だよな? 本気で男とヤりたいなんて、これっぽっちも思ってないだろ」
「そんなに信じられない? なんならフェラしてみせようか」
フェ……って……。
ストレートな物言いにこっちが閉口してしまう。
その心境を知ってか知らずか、夕都は前に屈んで俺の脚の間に身を乗り出してきた。
「じゃ……本当にやるよ。いいね?」