それで、また会ってる。
第1章 冷たい手
「俊紀さん、そこは……や……っ!」
密室で密着している異常な光景。シャワーで汗を流したはずが、また汗をかく結果となっている。体温は瞬く間に上昇した。
「熱……っ」
夕都の柔らかくて小さい舌を絡みとるように、深いキスをした。
「今どんな気分? 予想外に……それとも予想通り、気持ち悪いか?」
気持ち悪い、と返されたらショックだけど。可能性は大いにあるけど、参考までに訊いておこう。
回答を待っていると、夕都は熱のこもった眼で唇を甘噛みしてきた。
「ううん。……ムカついたからだと思うけど、すげぇ興奮してきた」
わざと音を立てて、至る場所に噛み痕を残していく。
「……OK」
いつの間にか、瞳は熱を帯びている。
水をかけられたらさらに勢いが増してしまう様な炎が灯っていた。
「やっぱお前、黒髪の方が似合ってるな」
左手で柔らかい夕都の髪を触り、右手で彼の性器を擦る。その仕草に連動して喘ぐ彼にキスを重ねた。
「ぅあっ!」
一際強く先端を指で弾くと、彼は少女の様に甲高い声を上げた。
「……っ!」
それが納得できなかったのか、夕都は片手で口を塞く。けどその手を強引に外させ、互いの両手を繋げた状態で再び口腔を犯した。
「んん……!」
容赦なく愛撫する。夕都はほとんどなされるままに自身の中を開放した。
「お前あんまりキス上手くないなぁ」
「だって今まではキスなんか省いて、すぐヤッちゃってたから……」
夕都は笑ってるのか睨んでるのか分からないような表情だ。
「そう。まぁ俺としてはお前の経験が少ない方が弄りがいはあるけど。これからは俺以外の奴とヤれるなんて思うなよ。俺だって、今やっと決心したんだから」
「もちろん。でもそれは俊紀さんも一緒だから油断しないでよ。もし浮気したら、またナイフ出すから。冗談だけど」
「あんま冗談に聞こえねえよ……」
それに関しては俺の地雷と言ってもいいぐらいだ。血の気が引く想いで夕都の頬をつねった。
でも。その剥き出しの刃こそが彼の弱さなんだと、今なら分かる。もちろんホントにしてきたら今度こそ追い出す……いや、通報して警察にお迎えに来てもらうつもりだけど。
心配ない。浮気なんて、こいつを置いてあり得ないから。
だから、もっと知りたいと思った。
彼が今まで見てきたものを……出逢う前に、何があったのかを。