
いつか…
第5章 :あなたと
それから
私から龍に手紙を送るようになった
授業中に書いて送る…
その繰り返し…
ある時…
あやのがウィルコムを貸してくれて
メールをさせてくれていた
お昼休み…
『ちょっとトイレ行ってくるね~』
あやのと借りていたコムを残して
私はトイレに行った
戻ってくると
「和希!!早く早く!!」
あやのに急かされ席にもどる…
『どしたの?』
「はいっ!!がんばって!!笑っ」
そう言って渡されたあやののコム…
…はい?
画面を見ると発信中…
『ちょっ…あやの!?誰!?』
そう言ってあやのが答える前に
コムから声がした
「…もしもしー?」
男の人の声…
パニックになる私…
あやのがなにか書いた紙を私に見せる
【彼氏!!ちゃんと話な♪】
「あれ?もしもーし?」
『ぁ…もしもし…?』
そう…
あやのが私の代わりに龍にメールを返して
電話番号を聞いたらしい…
はじめて聞く龍の声…
けどそれどころじゃない私
突然のことでよく理解ができていない…
正直あのとき何を話したのか
ちゃんと覚えていない…
うん…とか
そんな返事しかできてなかったと思う
無料通話の時間は10分
あっという間に過ぎて電話を切る…
…放心状態の私…
「どうだった?」
楽しそうに聞いてくるあやの…
私の目からはなぜか涙…
そのあと訳もわからず号泣…笑っ
きっとこの事がなかったら
私はいつまでも龍と電話なんて
出来てなかったと思う
その日から
あやのの許可が出るときは
龍に電話するようになって
それでも足りなくなっていく…
親がいないときに家の電話から電話した
さすがに電話代が高くなって
親が誰と電話してるのか聞いてきた
『あやのと電話しててね?』
もちろんあやのに許可させて言う嘘…
それからは貯めていたお金で
公衆電話からかけたりもした
いつも他愛もない話…
それでも
龍の声が聞けるたびに
幸福感に包まれる
そんな日が続いていた…
