赤い恋 ~sho sakurai~
第36章 君がいない生活
ー『ピロンっ』
翔「!」
和「きたね、」
無機質な機械の音が静かな部屋に響いた。
やけに大きな音に聞こえた。
にのがゆっくりマウスを動かしてメッセージを開く。
ー『カチっ』
『ReRe:題 無題
え?結衣?どういうことでしょうか…?』
……うーん…。
なんとも微妙な反応。
めちゃめちゃ疑ってるって訳でもなさそうだけど信じてる訳でもなさそうだ。
和「とりあえずやりとりを続けて信じてもらうしかないよ」
にのの言葉に頷き俺は初めて佐織さんに会ったときのことを思い出していた。
ー『結衣…、寝言で言ってましたよ。翔ちゃん…って』
翔「……にの…、俺が…、打っていい?」
和「え…、別に構わないけど」
『はい』
にのはそういってパソコンの前をかわってくれた、
翔「ん、」
あの時のことを話せば信じてくれるかも。
ー『ReReRe:題 無題
櫻井です。佐織さんと初めてお会いしたときのこと覚えてますか?佐織さん、教えてくれましたよね。結衣が寝言で俺の名前呼んだこと。多分、俺じゃなきゃ知らないことだと思うんですが…。返信お待ちしております。』
頼む…。
微かな願いを込めて俺は送信ボタンをクリックした。
和「ふーん…、そんなことが…」
にのがニヤニヤと俺の顔を覗き込む。
翔「ばっ!なに見てんだよ!いいだろ!もう!」
なに冷やかしてんだよ。
こんなときに…!
ー『ピロンっ』
翔「きた!」
いい返信だと期待して俺はメッセージを開く。
『ReReReRe:題 無題
櫻井さん?もしかしてほんとにほんとですか…?もし、ほんとなら、結衣があたしの結婚式の二次会でずっと気にしてたこと、言ってください。もしあっていれば、信じます!』
翔「にの…!」
和「うん!翔ちゃん…、結衣は…何を気にしてた?」
結衣は…。
翔「……」
ー『カタカタ…』
ほんとに結衣は優しくて馬鹿みてぇに俺らのために尽くしてくれて…。
そんな結衣がずっと気にしてくれてたのは…。
『ReReReReRe:題 無題
俺らの晩御飯です。』
和「……結衣…、」
何よりも、今すぐ取り戻して。