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赤い恋 ~sho sakurai~

第37章 電話





結「のぁーーー!暑い!!」

この炎天下で昼間っからガラガラと、どでかいキャリーケースを引くのはなかなか堪える。


あれからどうしていいか分からない私はとりあえずネカフェを出た。

いつまでもあそこにいるわけにはいかないからね。


結「あぁー…、それにしても暑い…」

真夏の空の下、もう私は焦げそう。


あぁー…、暑いなぁ…。


結「あ…、」

私の目に留まったのは小さな喫茶店。

結「……素敵…、」

レトロな風貌を醸し出すそのお店はまさに大人のお洒落、といった感じ…。


結「……うん、」

少し入ってみよう。

そう思って私はガラガラとキャリーケースを引きずってお店の前へと歩く。

扉に手をかけてゆっくりと開けた。


ー『カランカラン』

ドアベルが可愛らしく鳴って、私が入ってきたことを知らせる。


「いらっしゃいませ」

店員さんが、カウンターの向こうから笑顔を向けてくれる。


結「……わー…」

店内も凄く落ち着いていて私はカウンターのはしっこに腰を降ろした。


「ご注文はどうなさいますか?」

さっきの店員さんが私の元へとやってきて聞いてくれる。

結「あ、アイスコーヒーください」

私がそう告げると、『かしこまりました』と、丁寧に頭を下げて、カウンター内へと戻っていった。


結「綺麗な人…、」

サラサラの長い髪を高い位置でくくっていて、かっこいい腰エプロンをしてる。

お店の制服はシャツに黒ネクタイでお店の雰囲気にピッタリだ。

まだ若い子みたいなのに、テキパキと私のアイスコーヒーを用意してくれてる。


「お待たせしました」

しばらくしてその子がコースターと共にアイスコーヒーを持ってきてくれた。

結「ありがとうございます」

一言お礼を言って、コーヒーに口をつける。


結「……ん!おいしい……」

小さく呟いたとき、カウンターに戻ったその子が微笑んで『ありがとうございます』と言ってくれた。


なんだか凄く落ち着くなぁ…。




半分ほど、アイスコーヒーを飲んだとき、

ー『ピリリリリ、ピリリリリ』

私のケータイだ。

結「?」

みんなからの電話はあれから死ぬほど沢山あったけど、どれも出ないでいた。


でも、ディスプレイを見ると、

結「……佐織?」










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