赤い恋 ~sho sakurai~
第32章 さよなら
翔「ただいま」
家に帰ってリビングに直行。
和「……おかえり、」
……分かるよ?にのがもう知ってることぐらい分かるよ。
何年も一緒にいるんだから。
それと…、いつも『おかえり』って言ってくれる結衣の笑顔がなかったから、
翔「…………結衣も知ってんの?」
俺は帽子をとってにのを見た。
和「……うん、ごめん、やっぱ言わない方がよかったかな…、」
翔「いや、いつまでも黙ってる訳にはいかないからね。…、多分、結衣のことでしょ」
にのもコクンと頷いた。
翔「……結衣、は?」
にのは小さく首を振った。
和「今は、多分翔ちゃんに会いたくないんじゃない…?というより、会えないんだと思う。ほら、結衣ってびっくりするぐらい謙虚な性格でしょ?…、自分のせいだって思ってるんじゃない?謝ってたし…、」
…………謝る?
なんで、なんで結衣が謝んだよ…。
翔「こんな記事さ、別にどうってことないのに…、」
にのは俺の言いたいことが分かったらしくてゆっくり頷いた。
翔「言っててくれる?結衣は悪くないし、俺も気にしてないからって、」
にのはちょっと微笑んでまた、頷いた。
和「……っし!ちょっと結衣心配だし、様子見てくるわ。翔ちゃんもご飯、食べてなよ」
俺は「ありがとう」と言って荷物を全部下ろして食卓に座り込んだ。
にのはリビングを出ていく。
翔「……はぁー…。何がしたいんだよ…」
結衣は悪くない。
欠片だって悪くない。
でも、結衣が自分に責任を感じてんじゃないかってなんとなくわかってはいた。
翔「……一人で背負い込みすぎ……」
でもやっぱり、
結衣のご飯は美味しかった。