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ふしだらと言わないで

第6章 慰み者の娘 3

 ―…

 私は屋敷を後にした
 高級車の中
 小さく遠くなっていく

 これから暮らす場所が変わる
 今、ものすごい勢いで業績を伸ばしている会社の二代目社長に、一目惚れという理由で見初められて

 時々わからなくなる
 一年二年前の自分が、今の自分を見たらどう思うだろう…と



「外が珍しい?」
「はい、カイトさま」



 車から景色を見続けた

 自らの歩んできた道
 親の愛情を受けられず、食べるものに困って骨が浮き出たガリガリの腕だった私が年収いくらかも知れない社長の愛人まで昇りつめた

 意味もなく笑う
 不思議すぎて変だなぁ
 ハーフの九条院海斗は
 髪を触って微笑む

 その髪もボサボサだった
 不清潔な肌、格好
 学校に行かせてもらえない
 オバケと呼ばれた



 そんな私が
 社長さんにキスされて
 情熱的なキスで
 エスコートされて
 高級そうなマンションの最上階の景色に目を輝かせている



「わぁぁぁ…」
「気に入った?」
「はい!」



 見たことがない
 それだけで笑顔になる

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