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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第2章 第一話 【桜草】 戸惑いと、ときめきと

「私が悩んでいるのは、それだけじゃない。私の父が真に殺害されたのかどうか、そのところはいまだに判らない。恐らく永遠の謎だろう。しかし、父の部下たちが火事に見せかけ殺されたのは紛れもない事実なんだ。そして、その卑怯な茶番劇をやったのは私の血の繋がった伯父なんだよ」
「―では、領相大監(ヨンサンテーガン)の甥というのは、あなた自身のことなの?」
 そこで、しまったと後悔する。今の話では、彼は事件のあらましを語っただけで、具体的に事件に拘わった人物が誰であるかは少しも喋っていないのだ。なのに、事件当時、まだ六歳にすぎなかった明姫がこの話を聞いただけで、すぐに領議政の名を出したのはおかしい。

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