身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第15章 第三話 【観玉寺の廃妃】 再生
ふと見上げた空は涯(はて)なく蒼かった。川縁には桜の樹が数本植わっている。どの樹も既に蕾がかなり膨らんで、可憐な薄紅色を覗かせている。桜の蕾にうっすらと雪が載っている眺めは現実離れしていて、なかなか美しい。
ヒャンダンの言うとおり、あと少しで開花するに違いない。
今にも開きそうな蕾を眺めているだけで、心が浮き立つようである。が、ふいに凄まじい嘔吐感が胃の腑の底からせり上がってきて、明姫は口許を手で覆った。少し先を歩くヒャンダンは気づいていない。
足許に纏いついている小花が不安そうに見上げ、キャンキャンと鳴いた。
「大丈夫だから。すぐに良くなるからね」
それは小花にというよりは、自分自身に言い聞かせる言葉であったかもしれない。
ヒャンダンの言うとおり、あと少しで開花するに違いない。
今にも開きそうな蕾を眺めているだけで、心が浮き立つようである。が、ふいに凄まじい嘔吐感が胃の腑の底からせり上がってきて、明姫は口許を手で覆った。少し先を歩くヒャンダンは気づいていない。
足許に纏いついている小花が不安そうに見上げ、キャンキャンと鳴いた。
「大丈夫だから。すぐに良くなるからね」
それは小花にというよりは、自分自身に言い聞かせる言葉であったかもしれない。