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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第16章 第四話 【永遠の少女】 愛しき者

 明姫に関する噂は様々な憶測が語られ、大方は先述したように唐の楊貴妃の触れなば落ちん風情の艶な―俗にいえば男好きのする美女を人々は勝手に思い描いていたのである。恐らくは〝傾国〟というイメージもそこから来たものに違いない。
 事実はまさに相反するものであったが、まさに、明姫はその頃から既に生きながら伝説と化していたような感があった。
 身支度を整え、後は王のお渡りを待つばかりとなった時、明姫は鏡を覗き込んでいた。明姫とて、そこはやはり女である。恋しい男には少しでも綺麗だと思って欲しい。そんな純粋な女心で鏡台を覗き、いささか濃いすぎる紅を指先で拭ったそのときであった。

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