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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第20章 第四話 【永遠の少女】 永遠に理解し得ぬ二人  

 彼の中で少女は永遠に刻を止めている。彼が生涯にただ一人、心から愛した桜草のような少女。
―妃よ、私はもう老いた。そなたのおらぬこの世で、それでも何とか今日まで生き存えてきたのは、そなたの今わの際の〝聖君になれ〟との言葉があったからだ。しかし、私ももう疲れたよ。王位も息子に譲った。そろそろ、そなたの許に行っても良い頃合いだろう?
 桜草を思わせる可憐な少女がふわりと彼に微笑みかける。その姿は彼が彼女と出逢った十五歳のときのままだ。そう、最初に出逢ったあの運命の日のように、明姫は今も優しく笑っている。

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