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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第22章 第二部【身代わりの王妃】 稚(おさ)な妻 

「こちらでおいで」
 王の声音は別段、苛立っている風でもなかった。その態度や表情から見て、特に怒りは感じられない。そのことに多少の勇気を得て、春花は王に恐る恐る近寄った。
 今をおいて、自分の望みを聞いて貰う機会はない。これは絶好の機会だった。
 口を開こうとしたまさにその時、春花の身体はまたしても軽々と抱き上げられた。
「あっ」
 今度は洩れ出る悲鳴を堪え切れなかった。王は春花を膝に載せ、顔をまじまじと見つめてくる。父以外の男の人の膝に乗るのなど、生まれて初めてのことだ。
 知らず身体が熱くなり、その中に頬まで火照ってきた。

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