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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第24章 第二部 【身代わりの王妃】 ひそやかな恋情

 彼女は真っすぐに歩き、山門をくぐり寺の境内に脚を踏み入れた。夏の生温い風に揺られ、風鐸が鳴る音がどこか物哀しげに聞こえる。
 春花は迷いない足取りで本堂に入った。見上げるような大きな仏像が三体並んでいる。黄金色の仏は曖昧な微笑を浮かべ、ひっそりとユンを見下ろしていた。
 春花は仏前にきちんと座り、長い間手を合わせて何かを祈っていた。かと思うと、立ち上がり手を合わせ、また座り込んで両手のひらを上向きにするといった五体投地を繰り返している。
 ユンも彼女に倣って祈りを捧げたが、すぐに終わってしまったので、傍らで春花が祈り続けるのをずっと眺めていた。今は気の済むようにさせてやるのが一番だと思った。

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