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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第25章 第二部 【身代わりの王妃】  想いのゆくえ

 王が心もち声をやわらげた。
「私と一緒に来なさい。怖いことはもうしないから」
 嘘だと、春花は思った。この人は平気で嘘をつく。初めての夜には何もしないし、娘として扱うと言ったのに、こんな酷いことをするのだもの。
 二人だけになったら、この男はまた豹変して飢えた獣が捕らえた獲物を屠るように私にに襲いかかってくるに違いない。春花は無意識の中に金尚宮の着物を掴んでいた。
「中殿、そなたは尚宮や女官たちの前で私にこれ以上、恥をかかせるのか?」
 冷えた声音とは裏腹に瞳は憑かれたような熱い烈しさを孕んでいる。

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